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ロレンツォ・ロット〜カッソッティ家の婚姻〜
今回、久しぶりの『絵画の中のジュエリー』は、ロレンツォ・ロットのユニークな作品から。ロットの作品は、一見古典的なようでよく観るとなかなかモダン。ティツィアーノやヴェロネーゼ等、ヴェネツィア派の華やかな巨匠と比べるとやや地味な感がありますが、なんとも意味深長な描写、そしてユニークな表現は飽きることがなく、彼の絵の意味を読み取るのはとても楽しいです。今回ご紹介するのは彼の指輪にまつわる作品です。

まだ若く初々しい、最新ファッションに身を包んだお洒落なカップルの肖像画。

ロレンツォ・ロット【カッソッティ家の結婚】
【I coniugi Cassotti 〜 カッソッティ家の婚姻】
プラド美術館(マドリッド・スペイン 1523年)

この男性はマルシリォ・カッソッティというベルガモの裕福な布商人の息子で、妻となるファウスティーナに今まさに指輪をはめようとする場面。この時代、指輪の交換は結婚の儀式の一つではなく、婚約を表す行為でした。

当時の肖像画は描かれた人物が不明なことが多いのですが、彼女がファウスティーナであると明らかにするのが、一つのジュエリーの存在です。

ロレンツォ・ロット【カッソティ家の婚姻】
彼女の首にかけられカメオのペンダントトップ、これは古代ローマ皇帝アントニウスの奥方ファウスティーナのプロフィール(横顔の肖像)。ここに画家は、彼女の名がファウスティーナであると暗に示しているのです。そして、真珠のネックレスは花嫁の純潔を意味します。そしてさすが布商人の御曹司だけあって、二人の衣装は大変ゴージャス。たっぷりと取った生地は光沢も美しく、襟や袖口に施されたレースはとても品良く繊細。帽子も洒落ていますね。

ロレンツォ・ロット【カッソティ家の婚姻】
花婿が指輪をはめようとしているのは、花嫁の薬指。これは現代にも受け継がれていますが、左手の薬指は古代エジプトより愛の血管が心臓まで繋がっているということで、男女の絆の証の指として結婚指輪はこの指にはめるのが伝統的。

それにしても、ふっくらとした頬とくりっと丸い目が印象的な二人の背後で、意味深長な笑みを浮かべるクピドの存在が奇妙でなりません。幸せな二人の肩に、まるでくびきをかけるように木を背負わせています。これはこの絵をロットに依頼した商人である父親が、息子のことをとても誇りに思う、けれどあえて彼にその責任の重さを感じさせたい、という意図のようです。美しいカラーの羽根を持つクピドのちょっと意地の悪い笑みは、二人の前途を祝福するというよりも、まだ暢気さが抜けぬお坊ちゃま風の彼を試すような、あるいは皮肉るような表情。こういう表現はいかにもロットならでは、類い稀な婚姻の肖像画です。


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| Ayumi | 絵画の中のジュエリー | comments(5) | - |
Comment
2010/03/09 11:40 PM posted by: akira
なるほどなるほど!と何度も心でうなずきながら
解説、批評(感想?)を楽しめました。
絵画の中身も実に説明の行きとどいた内容ですね。
コスチュームも小道具も目線も実に効果的です。
観る人を導くような花婿の目線。
本当に意味深長なクピドの視線。
将来の何かを見つめているような?花嫁。
薬指に結婚指輪をはめる意味はそうだったんですね。
納得し、なんだかまたはめたくなりましたが、余計
なことを考えずにお休みなさいませ。

余談ですがこの場をお借りして明日10日21:30
からBSで「ヴァチカンの美術」が放映されます。
2010/03/12 7:09 AM posted by: cucciola
Ayumiさま、

こんばんは。
これまた素敵なロットの作品と解説を拝見しました。ロットは本当に作品中でのちょっとした「お遊び」が好きな画家ですね。
それにしてもこの花婿のお父さんのお言葉、なかなか重々しくて素敵じゃないですか。苦労を知らなそうなでもお幸せそうなお二人、実際にはどんな人生を共に歩んだのでしょう?Ayumiさんがおっしゃる通り本当に「おぼっちゃま風」で、なんだか江戸時代の若旦那さんみたいですね!
2010/03/12 11:45 PM posted by: Ayumi
akiraさん、こんばんは!

いつも本当にありがとうございます。
本当、二人の視線がしっかりとこちらに向いていますね。
それがどことなく二人に好感のもてる所以でしょうか。
それにしてもこのクピド、吹き出しでも付けて、何かを言わせてみたいくらいに物言いたげですよね。
akiraさんも再び愛の血管を意識して、絆を確認されているでしょうか?どうぞ良い週末を!


cucciolaさん、こんばんは♪

そうそう、いつもロットのこのサジェスチョンをなんと言ったらいいかなぁと思うのですが、「お遊び」がぴったりきますね。観る我々も楽しませてもらえます。
ねっ!この花婿、なんかほんまにぼんぼんって感じで。きっとこのクピドは「これからはしっかりせなアカンねんで、ぼん」と言ってるのかも?
その後も二人は仲睦まじく過ごしたのかなぁ。なんだか二人を身近に感じる肖像画ですね。
2010/04/15 1:50 PM posted by: Francesca
こんにちは!
ブログにまた邪魔しました!
この間鳥の写真の記事しか見なかったけれど、今日美術についての記事をいっぱいあると気がついた!
説明は分かりやすくて、Ayumiさんは美術が好きだと分かります!(^_^)
ちなみに、私はプラド美術館に行ったことがあるけれど、この作品は覚えていません!(>_<)
行く前にAyumiさんの記事が読めたら、美術館で探して本当の作品が見れたのに〜
美術について次の記事を楽しみに待っています!(^_^)
2010/04/16 12:25 AM posted by: Ayumi
Francesca様、こんばんは!

他の美術の記事等もご覧頂いて、また最高の褒め言葉まで頂いて、めっちゃ幸せです〜
Francescaさんは、プラドへ行かれたことが?うらやましいです!実は私、いまだ未訪なのです。もし行くことがあればこの絵は絶対探してみたいですね。
またこれからも美術関連記事を更新して行きますので、是非是非ご覧いただければと存じます。またFrancescaさんのブログも拝見させて頂きますね(^^)
ありがとうございます!

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