『THE ハプスブルク』イタリア絵画編
2010.02.11 Thursday 23:47
前回に引き続き、京都国立博物館で開催中の『THE ハプスブルク展』(会期 2010年1月6日〜3月14日)について。今回はイタリア絵画について、書きたいと思います。出展されている作家については、ほとんどが一度は取り上げたことがあるので、それぞれリンクを張ります。ご興味のある方はどうぞ。
ハプスブルク家に支配された歴史のある国々にイタリアも含まれていますから、歴代の君主は主に北イタリアの、とりわけ16世紀ヴェネツィア派の絵画を好んで収集したようです。
イタリア絵画のセクションは、ラファエッロの【若い男の肖像】から始まります。まだ瑞々しさの残る初期の頃の肖像画。映画『華麗なる激情』に登場するラファエッロがこんな感じだったためか、私のイメージするラファエッロにそのまま重なるのですが、おそらく別の人物(詩人ピエトロ・ベンボあるいは他の人文学者)だそうです。
そして、色彩豊かなラファエッロから、ぐっと落ち着いて写実的なジョルジョーネへ。

ジョルジョーネ【矢を持った少年】
背景に溶け込んで、なんだか目を離すと今にも消えてしまいそうな少年像。神話なのか、宗教画なのか、あるいは肖像画なのか?諸説ありますが、中性的な柔らかな美しさは、なんとも神秘的です。でも好みでいうと、前回アップした【フランチェスコ・マリア・デッラ・ローヴェレの肖像】の方が好きなのですが。

ロレンツォ・ロット【聖母子と聖カタリナ、聖トマス】
やっぱり素敵です、ロレンツォ・ロット。彼の率直な線と鮮やかな色彩、そしてどこか意味深なその作風に惹かれるのですが、この聖会話は特に色彩に優れていて、空色の衣装をまとった聖母の存在感はまさに堂々たるもの。登場人物がまた皆良い表情をしているのです。
今回はうれしいことに、ティツィアーノとその工房作から4点。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ【イル・ブラーヴォ】
まず、この題名におやっ?と。”イル・ブラーヴォ”ってなんやろ?
帰ってティツィアーノ本を見ると”刺客”だそうです。なんとも緊迫感のある場面ですが、若者が葡萄の葉冠を被っているところが、若干気の抜けるところかも。この冠から彼は酒の神バッカスという説もあるそうです。それにしても、この黒光りした鎧の表現はさすが見事。
もう一枚ティツィアーノを。

とても艶かしい聖母です。少し【ウルビーノのヴィーナス】に似ているかも。同行者が左から観るのと、右から観るのとでは印象が違うというので、そうして観てみたら確かに艶っぽい表情が敬虔な表情に変わるような。よろしければお試しください。

ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ【ヤコポ・コンタリーニの肖像】
ティツィアーノの肖像画は写実的であると共に、その社会的地位を際立たせ、内面を描きだすという並外れた技術を備えています。それはひとえに、彼がその対象を極めて客観的に観て、それを実際以上に克明に表現できたということ。
そして面白い話に、もし素顔の肖像画を描いてもらいたければ、ティツィアーノはこのベルガモ人のジョヴァンニ・バッティスタ・モローニを推薦したということ。ということは、モローニはティツィアーノほど人間の内面を暴くことなく、より見たままに写実的に描いたということ。といっても、彼が技術的に劣っていたと言うわけではありません。この絵は、本当に今にも動き出しそうなほどリアルで、かつ魅力的でもあります。
パリス・ボルドン【アレゴリー:マルス、ヴィーナス、ヴィクトリア、キューピッド】
華やかなこの寓意画。自然豊かに、神々も生き生きと描かれています。でもヴィーナスの腕っ節の太さに思わず発した私の言葉、「このヴィーナス、えらい逞しいわぁ」に、隣のカップルも「ほんまやぁ」と。ちょっと笑った瞬間。

ルーカ・ジョルダーノ【物乞い】
このタイトルは正確ではありません。ただ彼が手にするフィアスコの瓶、ここに書かれている”Dal Paiostrosi”は図録によると「三文文士」を意味するそうです。私がスペイン人画家で最も愛好するリベラの弟子である彼の作品は、解剖学的にも忠実な描写で、観る者に迫ってきます。是非、実物を観て、彼の描く瞳の力を感じて頂きたいです。
また、イタリア人の中からも宮廷画家としてウィーンで活躍した人物がいます。
まず思い浮かぶのは、ルドルフ二世に使えたジュゼッペ・アルチンボルド。
そしてこの美術展に出展された、皇帝レオポルト1世に仕えたグイド・カニャッチがいます。

グイド・カニャッチ【クレオパトラの自害】
彼はクレイパトラの絵を好んで、あるいは注文を受けて描いています。そのヴァリエーション豊かな中でも、今回の一枚は親しみやすい作品。何を隠そう、我が家に唯一かけられている絵は彼の【クレオパトラ】だったりします。
この『THE ハプスブルク』に出展された27点のイタリア絵画。
ここに書いた以外にも、ティントレットやヴェロネーゼなど素晴らしい作品があります。そして、スペイン・ドイツ・フランドル絵画へ。次回はこのセクションに触れてみたいと思います。
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ハプスブルク家に支配された歴史のある国々にイタリアも含まれていますから、歴代の君主は主に北イタリアの、とりわけ16世紀ヴェネツィア派の絵画を好んで収集したようです。
イタリア絵画のセクションは、ラファエッロの【若い男の肖像】から始まります。まだ瑞々しさの残る初期の頃の肖像画。映画『華麗なる激情』に登場するラファエッロがこんな感じだったためか、私のイメージするラファエッロにそのまま重なるのですが、おそらく別の人物(詩人ピエトロ・ベンボあるいは他の人文学者)だそうです。
そして、色彩豊かなラファエッロから、ぐっと落ち着いて写実的なジョルジョーネへ。

ジョルジョーネ【矢を持った少年】
背景に溶け込んで、なんだか目を離すと今にも消えてしまいそうな少年像。神話なのか、宗教画なのか、あるいは肖像画なのか?諸説ありますが、中性的な柔らかな美しさは、なんとも神秘的です。でも好みでいうと、前回アップした【フランチェスコ・マリア・デッラ・ローヴェレの肖像】の方が好きなのですが。

ロレンツォ・ロット【聖母子と聖カタリナ、聖トマス】
やっぱり素敵です、ロレンツォ・ロット。彼の率直な線と鮮やかな色彩、そしてどこか意味深なその作風に惹かれるのですが、この聖会話は特に色彩に優れていて、空色の衣装をまとった聖母の存在感はまさに堂々たるもの。登場人物がまた皆良い表情をしているのです。
今回はうれしいことに、ティツィアーノとその工房作から4点。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ【イル・ブラーヴォ】
まず、この題名におやっ?と。”イル・ブラーヴォ”ってなんやろ?
帰ってティツィアーノ本を見ると”刺客”だそうです。なんとも緊迫感のある場面ですが、若者が葡萄の葉冠を被っているところが、若干気の抜けるところかも。この冠から彼は酒の神バッカスという説もあるそうです。それにしても、この黒光りした鎧の表現はさすが見事。
もう一枚ティツィアーノを。

とても艶かしい聖母です。少し【ウルビーノのヴィーナス】に似ているかも。同行者が左から観るのと、右から観るのとでは印象が違うというので、そうして観てみたら確かに艶っぽい表情が敬虔な表情に変わるような。よろしければお試しください。

ジョヴァンニ・バッティスタ・モローニ【ヤコポ・コンタリーニの肖像】
ティツィアーノの肖像画は写実的であると共に、その社会的地位を際立たせ、内面を描きだすという並外れた技術を備えています。それはひとえに、彼がその対象を極めて客観的に観て、それを実際以上に克明に表現できたということ。
そして面白い話に、もし素顔の肖像画を描いてもらいたければ、ティツィアーノはこのベルガモ人のジョヴァンニ・バッティスタ・モローニを推薦したということ。ということは、モローニはティツィアーノほど人間の内面を暴くことなく、より見たままに写実的に描いたということ。といっても、彼が技術的に劣っていたと言うわけではありません。この絵は、本当に今にも動き出しそうなほどリアルで、かつ魅力的でもあります。
パリス・ボルドン【アレゴリー:マルス、ヴィーナス、ヴィクトリア、キューピッド】
華やかなこの寓意画。自然豊かに、神々も生き生きと描かれています。でもヴィーナスの腕っ節の太さに思わず発した私の言葉、「このヴィーナス、えらい逞しいわぁ」に、隣のカップルも「ほんまやぁ」と。ちょっと笑った瞬間。

ルーカ・ジョルダーノ【物乞い】
このタイトルは正確ではありません。ただ彼が手にするフィアスコの瓶、ここに書かれている”Dal Paiostrosi”は図録によると「三文文士」を意味するそうです。私がスペイン人画家で最も愛好するリベラの弟子である彼の作品は、解剖学的にも忠実な描写で、観る者に迫ってきます。是非、実物を観て、彼の描く瞳の力を感じて頂きたいです。
また、イタリア人の中からも宮廷画家としてウィーンで活躍した人物がいます。
まず思い浮かぶのは、ルドルフ二世に使えたジュゼッペ・アルチンボルド。
そしてこの美術展に出展された、皇帝レオポルト1世に仕えたグイド・カニャッチがいます。

グイド・カニャッチ【クレオパトラの自害】
彼はクレイパトラの絵を好んで、あるいは注文を受けて描いています。そのヴァリエーション豊かな中でも、今回の一枚は親しみやすい作品。何を隠そう、我が家に唯一かけられている絵は彼の【クレオパトラ】だったりします。
この『THE ハプスブルク』に出展された27点のイタリア絵画。
ここに書いた以外にも、ティントレットやヴェロネーゼなど素晴らしい作品があります。そして、スペイン・ドイツ・フランドル絵画へ。次回はこのセクションに触れてみたいと思います。
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